CARLOS GHOSNの日産改革
日本において、日産自動車(BRASIL 出身、カルロス・ゴーン社長)の経営改革が急進展し、世界の注目を集めている。「コストカッター」と異名を取る、カルロス・ゴーン社長の改革方法を分析してみると、意外な事に、その方法は古典的である。昭和40~50年頃〔1965年~1975年〕、日本において「再建王」といわれた人々(佐藤造機<現三菱農機>、興人の早川種三、東洋製鋼、ツガミ、池貝鉄工の大山梅雄、来島ドック、函館ドック、佐世保重工の坪内寿男)が実施したやり方、其れは、即ち徹底したコストダウンである。“しがらみ(柵・笧)を排除する”という点も全く同様である。以下、その改革方法の要点を簡単に述べる。
1. 売上、経費及び利益の相関
改めて、述べるまでも無く、世界の企業経営者に共通、普遍性のある経営理念は次の三つであるといわれている。
1) 適正に利益を出す
2) 人材を育てる
3) 社会に報恩、還元する
企業が、生き残り、永続する為には、その規模の大小に関係なく適正な利益が必要であり、絶対条件である。つまり、儲ける、儲かることが、第一目的 1)で、その達成手段が、2)、利益の使い道が 3)ということになる。周知のように、経営に於ける、売上、経費(コスト)及び利益の関係は次式になる。
売上=経費+利益 (注)経費=固定費+変動費
式をみて明確のように、確実に儲ける(利益を出す)為には、
① 現状経費(コスト)で売上を増やす。
② 売上を現状維持にして、経費(コスト)を下げる。
以下、A 社における売上、経費及び利益を仮定して①及び②の実効について述べる。
A社における3年間の利益実績
| | 2002年度実績 | 2003年度実績 | 2004年度10%C.D | 2004年度20%C.D |
| 売上 | 1,100 | 1,100 | 1,100 | 1,100 |
| 経費 | 1,000 | 1,100 | 900 | 800 |
| 利益 | +100 | +0 | + 200 | + 300 |
(数字の単位は自由、C.D=Cost Down)
A社の2002年度実績は、売上、1、100.経費、1,000.利益、+100.である。売上利益率は約9%である。所が、2003年度も売上が低迷、増加しなかったが、経費は増加した為、実績は、売上、1,100.経費、1,100.利益+0.である。
そこで、A社では、全員参加の生産性向上活動(C.D)を計画、2004年度はC.D目標を10%に設定し、活動開始に踏み切った。予定どおりに、進展したとすれば、売上、1,100.経費、900.利益、+200.の達成になる。
2002年度と比較すれば、売上が同じなのに、利益は丁度2倍(x2)になっている。結局、
「10%のコストダウンは、売上2倍に相当する利益を生む」のである。
因みに、この表は、「20%をコストダウンすれば、売上3倍に相当する利益を生む」ことを教えている。
もし、A社のような利益率の企業が、現状のやり方で、利益を2倍にしようとすれば、単純に売上を2倍にすればよいが、そのために、投資(設備、人材、材料)が増加し、固定費・変動費が増加するため、短期間での目標達成は不可能になる。
2. 日産自動車再建の具体例
先のA社の例はC.Dの効果を分りやすく説明する為に、中井川式スキル管理の創始者、中井川正勝先生の作った説明用の表である。ここでは、ここ数年間の日産自動車の経営指標の中で、売上を増やさずに、短期間に利益をだす事ができる具体例(中井川表の証明)が見られるので紹介してみよう。
先ず、1998 年度から、2003年度までの売上高、営業利益の一覧表を下に示す。
(単位:億円)
| 決算期 | 1998年 3月期 | 1999年 3月期 | 2000年 3月期 | 2001年 3月期 | 2002年 3月期 | 2003年 3月期 | 2004年 3月期 | 2005年 3月期 |
| 売上高 | 35,461 | 33,197 | 29,970 | 29,801 | 30,199 | 34,191 | 34,802 | 37,187 |
| 経費 | 34,605 | 33,045 | 30,127 | 28,523 | 27,776 | 31,030 | 32,254 | 34,869 |
| 営業利益 | 856 | 152 | -157 | 1,278 | 2,423 | 3,161 | 2,458 | 2,318 |
| 利益率(%) | 2.41 | 0.46 | -0.52 | 4.30 | 8.02 | 9.25 | 7.06 | 6.24 |
1999年3月27日、日産・ルノーの資本提携成立、10月18日、最高執行責任者(COO)・カルロス・ゴーン再建請負人による「日産リバイバルプラン」発表。国内五工場・ラインの閉鎖、グループの14%に相当する2万1000人の人員削減、取引先の半減、関係会社、株式のほぼ全面的な売却などの Cost Down、リストラ計画が中心であった。
1998年3月期と比べると、2003年3月期は売上高は 3.58%減少しているにもかかわらず、売上原価を7.67%削減、販売費及び一般管理費を 24.29 %削減できた事で、営業利益は2,305億円の増加、比率にすれば、369.28 %(3.7倍)の増加になり、先の中井川理論と略一致していることがわかる。結局、
「企業を短期間に、利益の出る体質に変えるためには、全員参加の生産性向上活動(CostDown)活動の実施以外に無い」
という結論になる。ここでいう全員参加の生産性向上活動(C.D)とは、具体的には、ジット(JIT)トヨタカンバン方式(トヨタ方式、ジャスト・イン・タイム)、TQC、TQM、TPM、POP、POS、5S(整理・整頓・清掃・清潔及び躾)など様々な生産性向上活動のことをいう。
数ある、生産性向上活動(C.D)の中で、新5Sは最も重要且つ効果的なC.D活動であり初期段階では避けて通れない基本的な活動である。
3. ISO、QS及びHACCPと新5Sの相関
最近、国際的に、ISO9000/14000,/18000及びQS9000の取得の必要性が叫ばれ、その取得が一種のブーム的様相を呈していることは周知の通りである。HACCP(Hazard Analysis Critical Control Point)取得も同様であり、STATUSとして取得する傾向が見られるのも事実である。今回は、ISO、QS及びHACCPと新5Sの相関について比較する。
ISO、QS及びHACCPと新5Sの相関
| 活動の目標・方法・結果 | 新5S,JIT,TQC,TPM活動のような生産性向上活動の実施 | ISO9000/14000/18000及びQS9000取得・維持活動 |
| 活動の目標(同じ) | 企業の体質改善と企業永続 | 企業の体質改善と企業永続 |
| 活動の直接目標 | 利益の確保・コストダウン | Certification,Statusの取得及び維持 |
| 活動の方法 | 全社的、全員参加で活動生産技術中心の活動 | 一部関係社員のみの活動管理技術中心の活動 |
| 経費面から見て・・・ | コストダウンの活動 | コストアップの活動 |
| 活動の結果 | 利益増大(コストダウン)になる | 売上増大に寄与する |
*Certification:認証、Status:地位、身分及び資格
ISO、QS及びHACCPなどには、必ず、5S的な活動が義務づけられている。取得するために、整理、整頓、清掃などの実施及び維持管理も決められているから「ISO・QS及びHACCP取得・維持活動だけで十分」という企業もある。しかし、ISO、QSおよびHACCPと新5Sの相関表で明確に分るように、利益を出すためには新5Sのような生産性向上活動は必要不可欠、Certification、Statusの取得及び維持も必要である。従って、この二つは同時並行的に実施されるべきであり、そうしなければ、利益増大(コストダウン)にならない。売上増で利益を確保するよりも、コストを下げて利益を確保するほうが敏速、確実なのである。
4.設備保全・設備改善について
企業が、利益を出し続け、永続するためには、三大コスト(設備投資、人件費及び材料費)のうち、設備と人間に関係するムダ(ロス)を完全に排除することが重要である。LOW COST自動化を進める為には、新5S・TPM(Total Productive Maintenance・全員参加生産保全)の実施が必要不可欠である。
「新しい技術、製品及び設備機械 開発マニュアル(考え方、手順、具体的事例)」については、「著書」をクリックして下さい。
新5S・TPMについては「日本語、英語及びポルトガル語の「ACERTO 100% DESPERDICIO ZERO」を参照されたし。
(注)しがらみ・柵・笧 ①水流をせき止めるために、川の中に杭を打ち並べて、その両側から柴や竹などをからみつけたもの。②物事を引き止めるもの。じゃまとなるもの。
NEWS(日産改革)2004・09・02
日産自動車は2日、新車6車種を同時発表する異例の演出で「再生」から「攻め」に転じる姿勢を鮮明にした。ただ、一方で経営目標を微妙に修正するなど、「ゴーン革命」は総仕上げの段階で変質しつつある。
「すべての市場が厳しい。多くの勝利を得ないと100万台達成は難しい」。横浜市で開かれた新車発表会でカルロス・ゴーン社長は、2004年度までの中期計画「日産180」で唯一残された「世界販売を01年度実績に比べ100万台増やす」との目標達成に執念をみせた。
ゴーン革命は、経営公約を次々に実現することをエネルギーに変えながら「V字回復」を推進してきたのが最大の特徴。04年3月期連結決算の純利益は過去最高の5036億円を記録。「1兆円企業」のトヨタ自動車には及ばないが、数字を見る限りは、優良企業への復活を果たした。
(共同通信) - 9月2日21時33分更新
日産 売上高、利益とも最高
(2005年4月26日 読売新聞)
日産自動車が25日発表した2005年3月期連結決算は、売上高が前期比15・4%増の8兆5762億円、本業のもうけを示す営業利益は4・4%増の8611億円、税引き後利益は1・7%増の5122億円といずれも過去最高を記録し、5期連続で増収増益を確保した。
◆米、中への販売好調
米国や中国などの販売が好調で、円高に伴う約780億円の為替差損などの減益要因を補った。
販売台数を地域別に見ると、米国が18・4%増となったほか、欧州を除く海外市場の好調に支えられ、2004年度の世界販売台数は、10・8%増の338万8000台と過去最高を更新した。部品などの購買コストの引き下げなどで1310億円の増益効果を上げるなど、販売増と効率化が好決算に大きく寄与した。
同日、記者会見したカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)は「日産は最も高い利益率を上げられる会社に成長した」と述べ、2005年度は売上高9兆円を目指す考えを示した。
(2005年4月26日 読売新聞)
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