1.ブラジルでの5S導入経緯と現状
周知のように、5S運動は1950年代、品質管理の七つ道具・石川ダイアグラム(魚の骨)で世界的に有名な石川馨先生が報告、以来、日本は勿論、世界中でTQC、QCC、ZDなどと一緒に生産性向上活動に使われて、普及している。ブラジルに於いては、初めはブラジル日系進出企業及び提携企業がTQC活動の一部として導入したが、1993年12月、JICA国際協力で来伯した技術士・中田賢治が、本格的に普及開始したものである。JICA受け入れ先のサンパウロ技術研究所(IPT)、サンパウロ大学(USP)、ブラジル工学協会(IE)でIPT及びUSP職員4名及びIE会員を中心に公募した生産性支援コンサルタント23名がモデル企業約30社に張り付き、活動を展開し、5Sの目的である「明るい職場作りを通して、適正利益を確保する」するために努力したのである。
2.5S活動の目的
1)企業経営者に共通、普遍性のある経営理念
細部の診断報告、評価,アドバイスに入る前に、「5S活動の目的」について確認しておく事にする。改めて、述べるまでも無く、世界の企業経営者に共通、普遍性のある経営理念は次の三つであるといわれている。
1)適正に利益を出す
2)人材を育てる
3)社会に報恩、還元する
企業が、生き残り、永続する為には、その規模の大小に関係なく適正な利益が必要であり、絶対条件である。つまり、儲ける、儲かることが、第一目的 1)で、その達成手段が、2)、利益の使い道が 3)ということになる。周知のように、経営に於ける、売上、経費(コスト)及び利益の関係は次式になる。
売上=経費+利益 (注)経費=固定費+変動費
式をみて明確のように、確実に儲ける(利益を出す)為には、
①現状経費(コスト)を増やさずに、売上を増やす。
②売上が増えない場合は、経費(コスト)を下げる。
以下、A 社における売上、経費及び利益を仮定して①及び②の実効について述べる。
A社における3年間の利益実績
| | 2002年度実績 | 2003年度実績 | 2004年度10%C.D | 2004年度20%C.D |
| 売上 | 1,100 | 1,100 | 1,100 | 1,100 |
| 経費 | 1,000 | 1,100 | 900 | 800 |
| 利益 | +100 | +0 | + 200 | + 300 |
(数字の単位は自由、C.D=Cost Down)
A社の2002年度実績は、売上、1、100.経費、1,000.利益、+100.である。売上利益率は約9%である。所が、2003年度も売上が低迷、増加しなかったが、経費は増加した為、実績は、売上、1,100.経費、1,100.利益+0.である。
そこで、A社では、全員参加の生産性向上活動(C.D)を計画、2004年度はC.D目標を10%に設定し、活動開始に踏み切った。予定どおりに、進展したとすれば、売上、1,100.経費、900.利益、+200.の達成になる。
2002年度と比較すれば、売上が同じなのに、利益は丁度2倍(x2jになっている。結局、
「10%のコストダウンは、売上2倍に相当する利益を生む」のである。
因みに、この表は、「20%をコストダウンすれば、売上3倍に相当する利益を生む」ことを教えている。
もし、A社のような利益率の企業が、現状のやり方で、利益を2倍にしようとすれば、単純に売上を2倍にすればよいが、そのために、投資(設備、人材、材料)が増加し、固定費・変動費が増加するため、短期間での目標達成はなかなか難しい。
2)日産自動車再建の具体例
先のA社の例はC.Dの効果を分りやすく説明する為に、スキル管理(TPM・全員参加生産保全の源流といわれる)の創始者、中井川正勝先生の作った説明用の表である。ここでは、ここ数年間の日産自動車の経営指標の中で、売上を増やさずに、短期間に利益をだす事ができる具体例(中井川表の証明)が見られるので紹介してみよう。(因みに、中井川先生は航空自衛隊学校長、住友電工及び日本能率協会顧問、中田の業務上の恩師である。)
先ず、日産の1998 年度から、2003年度までの売上高、営業利益の一覧表を下に示す。
(単位:億円)
| 決算期 | 1998年3月期 | 1999年3月期 | 2000年3月期 | 2001年3月期 | 2002年3月期 | 2003年3月期 |
| 売上高 | 35,461 | 33,197 | 29,970 | 29,801 | 30,199 | 34,191 |
| 経費 | 34,605 | 33,045 | 30,127 | 28,523 | 27,776 | 31,030 |
| 営業利益 | 856 | 152 | -157 | 1,278 | 2,423 | 3,161 |
| 利益率(%) | 2.41 | 0.46 | -0.52 | 4.30 | 8.02 | 9.25 |
1999年3月27日、日産・ルノーの資本提携成立、10月18日、最高執行責任者(COO)・カルロス・ゴーン再建請負人による「日産リバイバルプラン」発表。国内五工場・ラインの閉鎖、グループの14%に相当する2万1000人の人員削減、取引先の半減、関係会社、株式のほぼ全面的な売却などの Cost Down、リストラ計画が中心であった。
1998年3月期と比べると、2003年3月期は売上高は 3.58%減少しているにもかかわらず、売上原価を7.67%削減、販売費及び一般管理費を 24.29 %削減できた事で、営業利益は2,305億円の増加、比率にすれば、369.28 %(3.7倍)の増加になり、先の中井川理論と略一致していることがわかる。
つい最近、日本企業、2004年度の売上及び利益の優良企業が発表されたが、日産はトヨタを筆頭にするトップテンに入り、完全に立ち直りかつ発展を印象付けたのである。
3)5S活動の目的
以上の報告で
「企業を短期間に、利益の出る体質に変えるためには、全員参加の生産性向上活動(Cost Down)活動の実施が絶対条件である」
・・・・・・・・・・という事が、理解できた筈である。
ここでいう全員参加の生産性向上活動(C.D)とは、具体的には、ジット(JIT)トヨタカンバン方式(トヨタ方式、ジャスト・イン・タイム)、TQC、TQM、TPM、POP、POS、新5S(整理・整頓・清掃・清潔及び躾)など様々な生産性向上活動のことを指すが、これらは全てコストダウン活動・ムダ取り活動である。
数ある、生産性向上活動の中で、新5Sは最も重要且つ効果的なC.D活動であり初期段階だけではなく、企業永続のために、企業が永続する限り、実施する必要がある基本的な活動である。
具体的には、企業内にある次の三つのムダ(ロス)を完全に取り除くことに注目したい。
*設備に関係するムダ(ロス)
*人間に関係するムダ(ロス)
*材料に関係するムダ(ロス)
ここで、確認したい事は、「これらのムダ(ロス)の排除分は今日から即、利益になる」という事実であり、このことは、活動の即効性を意味している。
5S理論は極めて簡単であるが、全員参加での実践が難しいため、頑張っている割には成果が出ずに迷っている企業が多い。5S挑戦中の企業を診断すると、大略次のステップを通過する。
①企業内、職場が、キレイ(3S実施)になる。
②企業内、職場が、効率が良くなる。
③企業内、職場が、明るく、コミニケーションが良くなる。
結果として、先の三つのムダ(ロス)が無くなり、企業体質が改善され、利益を出し続ける企業に変身することになる。
4)5Sと新5Sの相違点
ここでいう「5S」は、整理・整頓・清掃・清潔及び躾のことであるが、1985年出版、「5Sテクニック」(日刊工業新聞社・工場管理編集部)から後を「新5S」と呼んでいる。
5Sと新5Sの相違点
| | 5S活動(1950-1984) | 新5S活動(1985-) |
| 整理(SEIRI) | 要る、要らないに分けて、不要の物を捨てる | 同じ |
| 整頓(SEITON) | 要る物をキチンと置いて、誰にでも分るように表示する | 同じ |
| 清掃(SEISOU) | ゴミなし、汚れなし(清掃) | ゴミなし、汚れなし+清掃は点検なり(清掃・点検) |
| 清潔(SEIKETSU) | 整理・整頓・清掃(3S)の維持 | 同じ |
| 躾(SHITSUKE) | 社会人、組織人として行うべき事をキチンと守る習慣付けのこと | 全社的道徳性向上運動+思いやり(相手の立場で物事を考える) |
3.新5SとISO及びHACCPの相関
1990年頃から、世界の企業経営現場に於いてISO及びHACCP取得活動が盛んになり、大企業は勿論、中小企業にも取得活動が波及している。ここでは、新5SとISO及びHACCCPの相関の比較表を示すので参考にして欲しい。
新5SとISO及びHACCPの相関
| 活動の目標・方法・結果 | 新5S活動 | ISO9000/14000/18000及びHACCP取得・維持活動 |
| 活動の目標(同じ) | 企業の体質改善と企業永続 | 企業の体質改善と企業永続 |
| 活動の直接目標 | 利益の確保・コストダウン | Certification,Statusの取得及び維持 |
| 活動の方法 | 全社的、全員参加で活動・生産技術中心の活動 | 一部関係社員のみの活動・管理技術中心の活動 |
| 経費面から見て・・・ | コストダウンの活動 | コストアップの活動 |
| 活動の結果 | 利益増大(コストダウン)に寄与する | 売上増大に寄与する |
*Certification:認証、Status:地位、身分及び資格
4. 新5Sの進め方(一般的なステップのサンプル)
新5S運動は、次の7ステップで進めていく場合が一般的である。急がず、遅れず、全職場が歩調をあわせて、ステップ・バイ・ステップ進めること。
ステップ:1 5S推進組織をつくる
①運営
*トップから一般社員まで全員参加で進めること。
*事務局は専任者を置く。複数の兼任より1名の専任を。
*月2回は推進委員会を開催。
②推進組織の役割
*推進本部・・・・・・5S推進の全般的指導を行う
*推進委員会・・・運動の企画、運営の中心的役割をになう
*事務局・・・・・・・・・5S教育、PR,推進の為の事務一切を引き受ける
③推進方針
*トップが率先垂範する
*各職場の独自のアイデアを尊重する
*決してあせらず、着実に進める
ステップ:2 5S運動開始宣言
*全員を1ヶ所に集めて宣言する
*社長自ら整理・整頓・清掃を開始します
*社内PRとして、5Sニュース・第一号を発行する
ステップ:3 全社一斉大清掃
*丸一日かけて、工場のすみずみまで大掃除を行う。
*5S運動開始宣伝と同時にやれば効果も大きい。
*タイミングを外さないことがポイントである。
ステップ:4 全社一斉整理の実施
*1ヶ月の間で3―4日(週1日でも可)、時間を決めて実施する。
*まず、職場リーダーを中心にして、全員で要らないものを決め、処分する。
*高価な物、責任不明な物、全社的なもの,判断が難しいものは推進委員が責任を持って決定、処分する。
*全職場一斉に実施することがポイントである。
ステップ:5 職場グループによる5S改善活動の実施
①改善項目をリストアップし、優先順位を付けて実行
*改善項目は、特に汚れているところ、整理・整頓すると便利になるところを取り上げる
*6ヶ月を1活動期間とします
②職場10分間発表
*(出来れば)トップと推進委員が職場に出向き、ここで改善報告。
*特に見せたい目玉改善を重点に。
*職場(現場)でみながらやるのがポイントである。
③目で見る職場ルールの作成
*全社的に統一するものは、推進委員が作成
*各職場ごとの独創性に期待!
*事務局は、他の職場がマネ出来るように掲示する。
ステップ:6 5S職場診断
*1年に1回、トップと推進委員が巡回し職場の評価をする。評価は・・・・
・組織的な運営が出来ているか(ミーチィング・役割分担など上手くいっているか)
・実際の職場の5Sはどうか(5Sチェックシートの活用・サンプル参照)
・職場の活性度はどうか(ミーチィングでの発言、参加度合いなど)
以上の三点から行う。
*優れている職場は全員の前で表彰する。
ステップ:7 ステップ5-6の繰り返し
*1サイクルまわったら、ここから先はただ、ただ繰り返すのみ
*どこまで回せるかで差が出てくる。
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