ワンポイントアドバイス
企業における経営の問題点は現場にあり、 その問題点の解決方法も現場にある。 (中田賢治の経験則)
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付加価値は企業の社会に対する貢献度のバロメーター・生産を示す指標
~ゼロサムゲームとともに~
ゼロサムゲーム(Zero-Sum Game)を辞書で見ると「プレーヤー間の利得の合計が常にゼロになるようなゲームのこと。参加者の一部の利益は他のものの不利益であって、合計すれば参加者全体の利益が拡大しない状況を指す」と説明している。
今日の世界はまさにゼロサム社会といえる。
今月はゼロサムと付加価値の相関について報告してみたい。これは視点を変えれば、今日の世界経済の中心である投機経済と実体経済を論ずることになるからである。
まず、手始めに付加価値とは何かについて述べる。これは生産活動によって新たに生み出された価値のことである。具体的には、企業の生産高から、その生産のために外部から購入された原材料など、他の企業の生産高を引いた金額を指す。
その値の求め方には、生産高から外部購入価値を引いて求める控除法と付加価値の構成要素である人件費、経費、利益の額を足して求める加算法がある。ここでの外部購入価値とは、主として原材料、外注加工費であるが、設備費(減価償却費)を含む場合を純付加価値、そうでない場合を粗付加価値と呼んで区別している。付加価値は企業の社会に対する貢献度を表すと同時に、生産を示す指標のひとつとして重要な役割を演じている。
さて、100円でつくった製品を1000円で売ったとすれば900円の儲けである。100円で買っておいた土地を1000円で売ったとすれば同じく900円の儲けである。両方とも900円儲かったということである。
しかし、これを資本という観点で論ずるとこのふたつはまったく別物なのである。
製品をつくるにあたっては、材料を買ってその材料を加工しなければならない。その材料費とそれを加工する労働力が原価100円の中味になる。その製品が非常に便利で、生活を1000円以上向上させるから100円の原価のものに1000円以上の価値が生れているから、誰でもそれを買うのである。
つまり、新たな価値を生み出したことに対する報酬が儲けであり、これを付加価値と呼び、買った人に富として残ることになる。
しかし、土地の場合は、100円で買って1000円で売り、900円の儲けが出たとしても、同じ土地であることに変りがない。
この世の中になんの価値も生まれていない。この900円は利潤ではなく差額である。他人の懐にあった900円が、こちらの懐に移動してきただけのことであり、付加価値がついたわけではない。何も生み出していない。これがゼロサムなのである。日本で人気のあるマージャンは典型的なゼロサムゲームである。
さて、先述のように、今日の世界経済は投機経済と実体経済の両輪で動いているが、その資金量で見ると投機経済では1日あたり195兆円、実体経済で5兆円。これが世界の金融市場で1日で動く資金総額である。投機でのそれは比率で97.5%、実体経済で2.5%、実に40倍もの資金が投機で動いていることに驚くのである。
この大きな投機資金を動かしてきたのが、周知のように、ジョージ・ソロスのような投機家やロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)といったヘッジファンドのコントローラー達であった。「あった」と過去形で述べたのは、彼らは先のロシア経済破綻の折、莫大な損害を出し、投機の表舞台から姿を消したり、再建途上であるためである。
LTCMの運用スタッフには、スタンフォード大学マイロン・ショールズ、ハーバード大学ロバート・マートンという二人の教授が参加しており、二人ともノーベル経済学賞を受賞している。
このような錚々たる経済の専門家が運用していたのに何故破綻するのか。ファンドは投機であり、本質的には賭博、博打の世界なのである。賭博であるからには儲かることもあれば損をする場合もある。当然のことである。世界の経済が投機、実体で動いていることは事実であり、その索引車が米国であり、資本主義経済大国であることも認めざるを得ない。
今日の資本主義経済の中で投機経済がいかに大きな地位を占めているかは理解したとして、今後、日本やブラジル、他の欧州、アジア諸国の経済活動はどのように向うだろうか。
結論を先に述べる。実態経済中心の活動が続くだろうと考えるし、付加価値のつく活動以外、生き延び、発展する道はない。
投機経済のみに向う愚かさは、先のバブルの崩壊で実証済みであり、大きな金を動かすこと、売上高の多いことは自慢にならないと知るべきである。
ここで、改めて、世界の企業経営者に共通、普遍性のある経営理念を示してみよう。
1)適正に利益を出す。
2)人材を育てる
3)社会に報恩、還元する
企業はその規模の大小に関係なく、社会に対して貢献し、適当な利益を出し続ける責務があるし出し続けなければ永続できない。周知のように、利益、売上高および経費(固定費、変動費)の関係は、次式で表される。
利益=売上高-経費
式を見て明確なように、利益を出す、損失を出さないためには、どんな条件下でも経費が売上高を超えないことである。このことは企業経営者であれば、当然考え、苦心していることである。
私は過去25年のコンサルタント経験の中で、数多くの大、中小企業経営者を知ったが、そのほとんどの人たちは、売上げを増やして利益を増やそうと考えているようである。これは単純に考えれば、正しいのであるが、今日の実体経済を生き抜くためには次の理由により少し修正すべきものと考える。
もう一度、式を見直してみる。利益を大きくするには、売上高を増やすか経費を少なくするかふたつにひとつである。
過去の右片上りの経済成長、発展時代はともかく、いま売上高を増やそうとすれば、経費も当然増加する。単純計算でも利益を2倍にするとすれば売上高を2倍にし、経費を2倍にしなければ目的は達成しない。つまり、人件費、投機(設備投資や減価償却費)を増加しないで売上げ増は難しいのである。
先の式で売上げが昨年と同じなのに、今年は利益が増加したとすれば、経費(コスト)が下がったからである。コストを下げれば、この相当分が利益という訳であり、儲けの出ていない企業にすすめたい活動である。但し、速効性があるからといって人件費削減が中心になる活動は感心しない。設備投資を抑える、現有設備はフル稼動させることによって設備生産性を見直して欲しいのである。
以前、「企業診断」で報告ずみであるが、コストダウン活動の有効性を証明してみたい。
A社の98年の売上げは1100であった。経費は1000、粗利(+)100になる。A社が99年に利益倍増(+200)計画を立て実行しようとすればA社の経営体質、利益率では2200の売上高が必要になる。これは不可能。そこでコストダウン(ムダ取り)10%目標を立て、実行し、達成した。
売上げは98年と同じ1100、経費は、1000の10%ダウン、900になり、利益は1100- 900=(+)200。A社99年度の利益は、98年度の丁度2倍になっている。
「10%のコストダウンは売上げ2倍に相当する利益を生む」ほど効果があるのである。
一般的に、再建屋と呼ばれる人々、四国の坪内氏、日産のカルロス・ゴーン氏などは情容赦なく社員を解雇(首切り)、下請けを切り、資産を売り、コストを下げた。コストダウン相当分は即利益になるから当然の作業といえる。コストダウン活動は速効性があるのが特徴であり、現に日産は今期2500億の利益が出てゴーン氏も一安心というところ。今後が腕の見せ所である。社員を解雇し、土地工業設備を売却し、下請を整理した後、いかに売上げを維持し、伸ばしていくか。前途多難であるが頑張って欲しい。
付加価値は企業の社会に対する貢献度のバロメーターであり、生産を示す指標であることを知って欲しい。
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